高血圧は、日本で最も患者数が多い生活習慣病の一つであり、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも呼ばれています。なぜなら、自覚症状がほとんどないままに、静かに血管を傷つけ、やがて心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる重大な病気を引き起こすからです。健康診断などで高血圧を指摘された場合、多くの人はかかりつけの内科を受診するかもしれませんが、より専門的な管理や治療を考えるなら、「循環器内科」を受診することが非常に重要です。その理由は、高血圧が、心臓や血管の病気に直結する、循環器疾患の最大の危険因子であるからです。循環器内科は、単に血圧を下げる薬を処方するだけではありません。高血圧が、心臓や血管にどの程度ダメージを与えているかを評価し、将来起こりうる合併症を予防するという、より長期的で専門的な視点から治療を行います。例えば、心電図検査で心臓に負担がかかっていないか(心肥大)、心エコー検査で心臓の動きや壁の厚さに異常はないか、頸動脈エコー検査で動脈硬化がどのくらい進んでいるか、といったことを定期的にチェックします。これらの検査結果に基づいて、個々の患者さんの状態に合わせた、最適な降圧薬を選択します。降圧薬には、血管を広げる薬、心臓の働きを少し抑える薬、余分な塩分と水分を排出する薬など、様々な種類があり、その人の年齢や合併症の有無によって、使い分ける必要があるのです。また、高血圧の患者さんの中には、他の降圧薬が効きにくい「治療抵抗性高血圧」や、腎臓の血管の異常、あるいはホルモンの異常など、特殊な原因によって引き起こされる「二次性高血圧」の方が隠れていることがあります。循環器内科では、こうした特殊な高血圧の診断と治療にも対応しています。高血圧の治療の目標は、単に血圧の数値を下げることではありません。その先にある、心筋梗索や脳卒中といった、人生を大きく左右する病気を未然に防ぐことこそが、真のゴールです。そのためには、心臓と血管の専門家である循環器内科医をパートナーとし、二人三脚で継続的な管理を行っていくことが、最も賢明で確実な選択と言えるでしょう。
高血圧は循環器内科へ、その理由