マイコプラズマ肺炎は、熱が出ていなくても、感染力があり、人にうつる可能性がある感染症です。この点が、この病気の厄介なところであり、集団生活を送る上で特に注意が必要な理由です。感染経路は、主に「飛沫感染」と「接触感染」です。飛沫感染とは、感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散る、ウイルスや細菌を含んだしぶき(飛沫)を、周囲の人が吸い込むことで感染する経路です。マイコプラズマ肺炎の患者さんは、頑固で激しい咳が長く続くため、周囲に飛沫を拡散させる機会が非常に多くなります。熱がないために本人に病気の自覚が薄く、マスクをせずに会話をしたり、咳をしたりすることで、知らず知らずのうちに感染を広げてしまうのです。潜伏期間が2〜3週間と長いことも、感染拡大の一因となります。感染してもすぐには症状が出ないため、その間に多くの人と接触し、感染の輪がじわじわと広がっていきます。学校のクラスや、家族内、職場のオフィスといった、閉鎖された空間で長時間一緒に過ごす環境では、特に集団発生(アウトブレイク)が起こりやすいとされています。接触感染は、ウイルスや細菌が付着した手で、自分の口や鼻、目などを触ることによって感染する経路です。例えば、感染者が咳を手で押さえ、その手でドアノブや電車のつり革に触れ、それを別の人が触り、さらにその手で自分の顔を触る、といった流れで感染が成立します。したがって、感染を予防するためには、基本的な感染対策の徹底が何よりも重要です。まず、咳の症状がある場合は、熱の有無にかかわらず、マスクを正しく着用することが、周囲への感染拡大を防ぐための最も効果的なマナーです。いわゆる「咳エチケット」を徹底しましょう。また、外出から帰った後や、食事の前には、石鹸と流水による手洗いを習慣づけることが、接触感染のリスクを減らす上で不可欠です。アルコールによる手指消毒も有効です。熱がないからといって、「自分は大丈夫」「人にはうつらないだろう」と考えるのは間違いです。長引く咳がある場合は、マイコプラズマ肺炎の可能性を念頭に置き、自らが感染源とならないよう、責任ある行動を心がけることが、社会全体の健康を守ることに繋がります。
熱なしでもうつる?マイコプラズマ肺炎の感染力