膀胱炎を疑って病院を受診すると、まず最初に行われるのが「尿検査」です。小さな紙コップに尿を採るだけの簡単な検査ですが、実はこの一杯の尿から、膀胱の中で何が起きているのかを知るための、非常に多くの重要な情報が得られます。医師は、この尿検査の結果を基に、迅速かつ正確に膀胱炎の診断を下すのです。尿検査には、試験紙を使って短時間で調べる「尿定性検査」と、尿を遠心分離機にかけて沈殿物を顕微鏡で詳しく観察する「尿沈渣(にょうちんさ)検査」の二つがあります。膀胱炎の診断で、特に重要となるのは以下の3つの項目です。第一に、「白血球(WBC)」の存在です。白血球は、体内に細菌などの異物が侵入した際に、それと戦うために集まってくる免疫細胞です。尿中に白血球が多数検出された場合、それは尿路のどこかで細菌感染による炎症が起きていることを示す、強力な証拠となります。試験紙では「白血球エステラーゼ」という項目でチェックされ、陽性となれば膀胱炎が強く疑われます。第二に、「細菌」の有無です。健康な人の尿は、基本的には無菌状態です。尿沈渣検査で尿を顕微鏡で観察した際に、多数の細菌が認められれば、それが膀胱炎の原因であることがわかります。試験紙では「亜硝酸塩」という項目で、間接的に細菌の存在を調べることができます。一部の細菌は、尿中の硝酸塩を亜硝酸塩に変える性質があるため、これが陽性となれば、細菌感染の可能性が高まります。第三の項目が、「赤血球(RBC)」、いわゆる「尿潜血」です。膀胱の粘膜で強い炎症が起きると、毛細血管が傷ついて出血し、尿中に赤血球が混じることがあります。そのため、尿潜血反応が陽性となることも、膀G光炎の所見の一つです。ただし、尿潜血は結石や腫瘍など、他の病気でも陽性となるため、これだけで診断するわけではありません。これらの検査結果と、排尿時痛や頻尿といった臨床症状を総合的に判断して、医師は膀胱炎の診断を下し、適切な抗菌薬の処方へと進みます。もし、薬を飲んでも治りが悪い場合や、何度も再発を繰り返す場合には、さらに詳しく原因菌の種類を特定するための「尿培養検査」が行われることもあります。簡単に見える尿検査ですが、そこには診断への道筋を示す、確かな情報が詰まっているのです。
膀胱炎で受診、尿検査で何がわかるの?