顎関節症による顎の痛みやこわばりは、日常生活に大きな支障をきたしますが、専門的な治療と並行して、自宅でできるセルフケアを取り入れることで、症状を大きく和らげ、回復を早めることができます。特に、緊張して硬くなった顎周りの筋肉(咀嚼筋)を優しくほぐすマッサージは、誰でも手軽に始められる効果的な方法です。ここでは、安全で効果的なマッサージとセルフケアのポイントをご紹介します。まず、ターゲットとなる主な筋肉は、頬骨の下あたりにある「咬筋(こうきん)」と、こめかみの部分にある「側頭筋(そくとうきん)」です。これらは、歯を食いしばる時に最も強く働く筋肉で、顎関節症の人の多くは、この二つの筋肉がガチガチに凝り固まっています。マッサージを行う際は、指の腹を使い、決して強く押しすぎず、「痛気持ちいい」と感じる程度の優しい圧で行うことが重要です。まず、「咬筋マッサージ」です。口を軽く開けた状態で、人差し指、中指、薬指の3本の腹を、頬骨の下の、歯を食いしばると硬くなる部分に当てます。そして、円を描くようにゆっくりと、10回ほど優しくほぐします。これを数セット繰り返します。次に、「側頭筋マッサージ」です。こめかみの、これも歯を食いしばると少し盛り上がる部分に指の腹を当て、同様に円を描くように優しくマッサージします。側頭筋は頭痛の原因にもなるため、ここをほぐすことで頭もスッキリする効果が期待できます。マッサージは、お風呂上がりなど、血行が良くなっている時に行うとより効果的です。また、蒸しタオルなどで顎周りを温める「温罨法(おんあんぽう)」も、筋肉の緊張を和らげ、血流を改善するのに役立ちます。逆に、急性の強い痛みや腫れがある場合は、温めると炎症が悪化することがあるため、冷たいタオルなどで軽く冷やす「冷罨法(れいあんぽう)」の方が適している場合があります。どちらが良いか迷う場合は、医師に相談しましょう。これらのセルフケアに加え、前述したような悪癖(TCH、頬杖など)を意識的にやめること、そしてストレスを溜めないようにリラックスする時間を作ることも、顎の痛みを根本から改善するためには不可欠な要素です。
顎の痛みを和らげる自分でできるマッサージとケア