唇や性器、皮膚にできた水ぶくれやただれ。ヘルペスを疑って皮膚科や婦人科などを受診したにもかかわらず、「ヘルペスではないようです」「原因がはっきりしませんね」と言われ、診断がつかずに困ってしまうケースも、稀にですが存在します。典型的な症状であれば診断は比較的容易ですが、非典型的な症状を呈する場合や、他の病気との見分けがつきにくい場合があるからです。例えば、ヘルペスの初期症状は、まだ水ぶくれがはっきりと現れず、赤みや軽い腫れだけということもあります。この段階では、虫刺されや接触皮膚炎(かぶれ)などと区別が難しいことがあります。また、性器ヘルペスの場合、女性では外陰部だけでなく、膣内や子宮頸部に病変ができることもあり、視診だけでは確認が困難なケースもあります。このように、診断がはっきりしない場合、あるいは治療をしても症状が改善しない場合には、どうすれば良いのでしょうか。一つの方法として、別の専門医の意見を聞く「セカンドオピニオン」を検討することが挙げられます。特に、大学病院や地域の基幹病院など、より多くの症例を経験している専門医が集まる医療機関を受診することで、新たな視点から診断が得られる可能性があります。また、診断を確定させるための「精密検査」を依頼することも重要です。ヘルペスの確定診断には、病変部から検体を採取してウイルスそのものやウイルスの遺伝子を検出する検査(抗原検査やPCR法)や、血液検査でヘルペスウイルスに対する抗体の有無や量を調べる方法があります。もし、視診だけで診断がつかないのであれば、こうした客観的な検査を行ってもらえないか、医師に相談してみましょう。さらに、ヘルペスと症状が似ている他の病気の可能性も考える必要があります。例えば、性器のただれは、梅毒の初期症状であることもありますし、手足口病でも口の中や手足に水ぶくれができます。ベーチェット病という、免疫系の異常によって口内炎や陰部潰瘍を繰り返す病気もあります。症状が一つの科だけにとどまらない場合は、「総合診療科」のような、幅広い視点から全身を診てくれる診療科を受診するのも有効な手段です。診断がつかない不安な状態を長引かせず、納得できる答えが見つかるまで、諦めずに様々な角度からアプローチしていくことが大切です。