突然、心臓がドキドキと速く打ったり、脈が飛んだり、あるいはドクンと強く打ったりする。このような「動悸」の症状は、多くの人が一度は経験するものであり、不安な気持ちにさせられます。動悸の原因は、ストレスや緊張、カフェインの摂りすぎなど、必ずしも病気とは限らないものもありますが、その背景に「不整脈」という心臓の病気が隠れている可能性も少なくありません。不整脈とは、心臓の拍動のリズムが一定でなくなる状態の総称です。動悸の症状で病院を受診しようと考えた場合、まず相談すべき専門の診療科は「循環器内科」です。循環器内科では、動悸の診断のために、まず「心電図検査」を行います。これは、心臓が拍動する際に発生する微弱な電気信号を記録する検査で、不整脈の診断における最も基本的な検査です。しかし、動悸の症状は常に起きているわけではなく、病院で検査をする時には治まってしまっていることも多々あります。そのような場合には、「ホルター心電図検査」が行われます。これは、携帯可能な小型の心電計を24時間体に装着し、日常生活の中での心臓の電気活動を連続して記録する検査です。これにより、診察中には捉えられなかった一時的な不整脈も見つけ出すことが可能になります。不整脈には、命に別状のないものから、注意深い経過観察が必要なもの、そして脳梗塞や突然死のリスクがある危険なものまで、様々な種類があります。例えば、脈が異常に速くなる「頻脈性不整脈」の代表である「心房細動」は、心臓の中に血栓(血の塊)ができやすくなり、それが脳に飛んで「脳梗索」を引き起こす大きな原因となります。また、脈が異常に遅くなる「徐脈性不整脈」では、めまいや失神発作を起こすことがあり、ペースメーカーの植え込みが必要になる場合もあります。動悸という症状は、心臓が発している重要なサインかもしれません。特に、めまいや失神、息切れ、胸の痛みを伴う動悸は、危険な不整脈の可能性があります。自己判断で「気のせいだろう」と放置せず、一度、循環器内科で専門的な検査を受け、その正体を突き止めてもらうことが、将来の深刻な事態を防ぐために非常に大切です。