突然の高熱と激しい喉の痛み。大人のヘルパンギーナの初期症状は、急性扁桃炎やインフルエンザ、そして新型コロナウイルス感染症といった他の疾患と非常によく似ており、初期段階での自己判断は極めて困難です。しかし、注意深く症状を観察することで、ある程度鑑別するためのポイントが見えてきます。まず、最も重要な違いが現れるのが「喉の所見」です。急性扁桃炎の場合、痛みは主に喉の両側にある口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)に集中し、扁桃腺が赤く腫れ上がり、白い膿(膿栓)が付着するのが特徴です。一方、ヘルパンギーナの痛みと発疹は、喉のさらに奥、軟口蓋や口蓋垂といった、上顎の奥の柔らかい部分に現れます。直径1~2ミリ程度の小さな水疱(小水疱)や、それが破れた後の浅い潰瘍(アフタ)が、複数個、散らばるように存在するのが典型的な所見です。鏡で口の奥をライトで照らしてみて、扁桃腺そのものよりも、のどちんこの周辺に赤いプツプツがあれば、ヘルパンギーナの可能性が高まります。次に、他の「随伴症状」の違いです。新型コロナウイルス感染症やインフルエンuenzaでは、咳や鼻水、鼻づまりといった呼吸器症状を伴うことが比較的多いのに対し、典型的なヘルパンギーナでは、これらの症状は軽微か、あるいは全く見られないことがほとんどです。全身の倦怠感や筋肉痛は共通してみられますが、ヘルパンギーナはとにかく「喉の痛み」が他の症状を圧倒するほど突出して強い、という点が特徴的と言えます。また、周囲の流行状況も重要な手がかりとなります。夏場に、子どもの間でヘルパンギーナが流行しているという情報があれば、自身の症状もそれに関連している可能性を考えるべきです。もちろん、これらはあくまで一般的な傾向であり、最終的な診断は医師による診察と、場合によっては迅速抗原検査などによって下されます。症状が似ているからこそ、自己判断で市販の風邪薬を飲み続けるといった対応は避け、異常を感じたら速やかに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが何よりも重要です。
初期症状で扁桃炎やコロナと見分けるポイント