ピリピリとした違和感の後、唇の周りに小さな水ぶくれができてしまう「口唇ヘルペス」。そして、体の片側に沿って帯状に激しい痛みを伴う発疹が現れる「帯状疱疹」。これらは、どちらもヘルペスウイルス科に属するウイルスが原因で起こる皮膚の病気であり、これらの症状が現れた時にまず向かうべき診療科は「皮膚科」です。口唇ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス1型」が原因で起こります。一度感染すると、このウイルスは顔の神経(三叉神経節)に潜伏し、風邪や疲労、ストレスなどで免疫力が低下した時に再活性化して症状を引き起こします。唇やその周りに、かゆみやチクチクとした痛みを感じた後、小さな水ぶくれがいくつか集まってできるのが特徴です。皮膚科では、この特徴的な見た目から診断を下し、抗ウイルス薬の塗り薬や飲み薬を処方します。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、治癒までの期間を短縮することができます。一方、帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因です。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経節に長年潜伏し、加齢や過労などで免疫力が低下したことをきっかけに再活性化して発症します。体の左右どちらか一方の神経の走行に沿って、帯状に強い痛みを伴う赤い発疹と水ぶくれが現れるのが最大の特徴です。この痛みは非常に強く、「焼けるような」「針で刺されるような」と表現されることもあります。帯状疱疹で最も怖いのは、皮膚症状が治った後も、数ヶ月から数年にわたって頑固な神経痛が残ってしまう「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症です。この後遺症のリスクを減らすためには、発症後できるだけ早く(できれば72時間以内に)抗ウイルス薬の服用を開始し、ウイルスの増殖を強力に抑えることが何よりも重要です。皮膚科では、抗ウイルス薬に加えて、痛みを和らげるための鎮痛薬も処方し、つらい症状をコントロールします。口唇ヘルペスも帯状疱疹も、放置すると症状が悪化したり、痕が残ったり、後遺症に悩まされたりする可能性があります。皮膚に異常を感じたら、自己判断で市販薬を塗ったりせず、皮膚の専門家である皮膚科医に速やかに相談しましょう。
口唇ヘルペスと帯状疱疹、皮膚科へ急ごう