あれは、大きな仕事のプレゼンを終え、心身ともに疲れ切っていた週末のことでした。ふと、右の唇の端に、ピリピリとしたような、ムズムズするような、何とも言えない違和感を覚えました。最初は乾燥しているだけかと思い、リップクリームを塗っていましたが、翌朝になると、その部分が赤く少し腫れ、小さな水ぶくれが2、3個できていることに気づきました。触るとチクチクと痛みます。「これは、よく聞くヘルペスというやつかもしれない」。そう直感した私は、インターネットで症状を検索しました。出てくる画像は、まさに私の唇の状態そのものでした。サイトには「早く治療を始めないと悪化する」「皮膚科へ」と書かれていました。週明けの月曜日、私は早速、会社の近くにある皮膚科クリニックのドアを叩きました。診察室で医師に唇を見せると、一目見るなり「ああ、典型的な口唇ヘルペスですね。疲れたり、ストレスが溜まったりしませんでしたか?」と尋ねられました。まさに図星でした。医師は、口唇ヘルペスが単純ヘルペスウイルスによって引き起こされること、一度感染すると体内に潜伏し、免疫力が落ちた時に再発することを、模型を使って分かりやすく説明してくれました。そして、「早く来てくれて良かった。薬を使えば、ひどくならずに治せますよ」と言って、抗ウイルス薬の飲み薬と塗り薬を処方してくれました。薬局で薬を受け取り、その日の昼から服用を始めました。すると、驚いたことに、夕方にはあれほど気になっていたピリピリとした痛みが和らぎ、水ぶくれの広がりも止まったように感じました。その後も5日間、指示通りに薬を飲み続けると、水ぶくれはかさぶたになり、1週間後にはほとんど痕も残さずに綺麗に治ってしまいました。もしあの時、自己判断で市販薬で済ませたり、放置したりしていたら、もっと症状がひどくなり、治るまでにも時間がかかっていたかもしれません。症状に気づいてすぐに専門家である皮膚科医に相談したことが、早期回復に繋がったのだと実感しています。体の小さなサインを見逃さず、迅速に行動することの大切さを学んだ経験でした。