突然の40度近い高熱と、唾も飲み込めないほどの激しい喉の痛み。大人のヘルパンギーナを疑わせる激烈な初期症状が現れた時、多くの人がまず悩むのが「一体、どの病院の何科に行けば良いのか」という問題でしょう。症状が内科的なものと耳鼻咽喉科的なものが混在しているため、迷うのも無理はありません。結論から言えば、最も適切な診療科は「耳鼻咽喉科」です。その最大の理由は、ヘルパンギーナの診断を確定づける上で最も重要な所見が、喉の奥の状態にあるからです。耳鼻咽喉科医は、ヘッドライトや内視鏡(ファイバースコープ)といった専門的な器具を用いて、喉の奥、特に肉眼では見えにくい軟口蓋や咽頭後壁の状態を詳細に観察することができます。ヘルパンギーナに特徴的な、赤い縁取りを持つ小水疱やアフタ性潰瘍の存在を直接確認することで、症状が酷似する他の疾患、例えば急性扁桃炎や伝染性単核球症などとの正確な鑑別診断が可能になります。内科でももちろん診察は可能ですが、喉の奥を詳細に観察する器具が揃っていない場合も多く、「急性咽頭炎」という大まかな診断に留まることもあります。また、耳鼻咽喉科では、痛みを和らげるための処置も専門的に行えます。例えば、強烈な咽頭痛に対して、局所麻酔薬や消炎剤を直接喉に噴霧・塗布する処置を行ってくれる場合があります。これにより、一時的に痛みが劇的に和らぎ、水分や食事の摂取が可能になることも少なくありません。これは、内科ではなかなか受けられない専門的な処置です。もちろん、近所に耳鼻咽喉科がない場合や、かかりつけの内科医がいる場合は、まずは内科を受診するのでも問題ありません。そこでヘルパンギーナが強く疑われれば、専門である耳鼻咽喉科を紹介される流れになるでしょう。しかし、選択が可能なのであれば、最初から喉の専門家である耳鼻咽喉科の扉を叩くことが、正確な診断と苦痛の軽減への最も効率的なルートであると言えます。