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2025年8月
  • 顎が痛い時に考えられる主な原因と診療科

    医療

    口を開け閉めするたびに顎がカクカク鳴る、食事中に顎に鋭い痛みが走る、あるいは朝起きると顎がだるくて口が開けにくい。こうした「顎が痛い」という症状は、多くの人が一度は経験する身近な不調ですが、その原因は一つではありません。そして、原因によって訪れるべき診療科も異なるため、最初の選択を間違えると、適切な治療にたどり着くまでに時間がかかってしまう可能性があります。顎の痛みの原因として最も頻度が高いのが、「顎関節症(がくかんせつしょう)」です。これは、顎の関節やその周りの筋肉(咀嚼筋)に問題が生じる病気の総称で、顎の痛み、口が開きにくい(開口障害)、顎を動かすと音が鳴る(関節雑音)というのが三大症状です。この顎関節症を専門的に診てくれるのが、「歯科」や「口腔外科」です。特に口腔外科は、口周りの外科的な疾患を扱う専門家であり、顎関節症の診断と治療における中心的な役割を担っています。次に、耳のすぐ前にある顎の関節の痛みから、「耳鼻咽喉科」を受診する人も少なくありません。実際に、中耳炎や外耳炎、耳下腺炎(おたふくかぜなど)といった耳やその周辺の病気が、顎の痛みとして感じられることもあります。耳の詰まりや聞こえにくさ、耳だれといった症状を伴う場合は、まず耳鼻咽喉科で耳の病気がないかを確認することが重要です。また、転倒などで顎を強くぶつけた後に痛みが生じた場合は、「整形外科」や「形成外科」が選択肢となります。骨折や脱臼の有無をレントゲンやCTで確認し、適切な処置を受ける必要があります。さらに、稀ではありますが、心臓の病気である狭心症や心筋梗塞の痛みが、顎に「放散痛」として現れることもあります。胸の圧迫感や息苦しさを伴う場合は、迷わず循環器内科や救急外来を受診しなければなりません。このように、顎の痛み一つとっても、その背景は多岐にわたります。まずは自分の症状をよく観察し、顎の動きそのものに問題があると感じるなら歯科・口腔外科へ、耳の症状を伴うなら耳鼻咽喉科へ、というように、最も関連が深いと思われる診療科を選ぶことが、解決への第一歩となるのです。

  • 初期症状を感じたら何科を受診すべきか

    医療

    突然の40度近い高熱と、唾も飲み込めないほどの激しい喉の痛み。大人のヘルパンギーナを疑わせる激烈な初期症状が現れた時、多くの人がまず悩むのが「一体、どの病院の何科に行けば良いのか」という問題でしょう。症状が内科的なものと耳鼻咽喉科的なものが混在しているため、迷うのも無理はありません。結論から言えば、最も適切な診療科は「耳鼻咽喉科」です。その最大の理由は、ヘルパンギーナの診断を確定づける上で最も重要な所見が、喉の奥の状態にあるからです。耳鼻咽喉科医は、ヘッドライトや内視鏡(ファイバースコープ)といった専門的な器具を用いて、喉の奥、特に肉眼では見えにくい軟口蓋や咽頭後壁の状態を詳細に観察することができます。ヘルパンギーナに特徴的な、赤い縁取りを持つ小水疱やアフタ性潰瘍の存在を直接確認することで、症状が酷似する他の疾患、例えば急性扁桃炎や伝染性単核球症などとの正確な鑑別診断が可能になります。内科でももちろん診察は可能ですが、喉の奥を詳細に観察する器具が揃っていない場合も多く、「急性咽頭炎」という大まかな診断に留まることもあります。また、耳鼻咽喉科では、痛みを和らげるための処置も専門的に行えます。例えば、強烈な咽頭痛に対して、局所麻酔薬や消炎剤を直接喉に噴霧・塗布する処置を行ってくれる場合があります。これにより、一時的に痛みが劇的に和らぎ、水分や食事の摂取が可能になることも少なくありません。これは、内科ではなかなか受けられない専門的な処置です。もちろん、近所に耳鼻咽喉科がない場合や、かかりつけの内科医がいる場合は、まずは内科を受診するのでも問題ありません。そこでヘルパンギーナが強く疑われれば、専門である耳鼻咽喉科を紹介される流れになるでしょう。しかし、選択が可能なのであれば、最初から喉の専門家である耳鼻咽喉科の扉を叩くことが、正確な診断と苦痛の軽減への最も効率的なルートであると言えます。

  • 妊娠中の膀胱炎、何科に相談すれば安心?

    医療

    妊娠中は、女性の体が大きく変化する特別な時期です。嬉しい変化と共に、これまで経験したことのないような様々なマイナートラブルに見舞われることも少なくありません。その中でも、特に注意が必要なのが「膀胱炎」です。実は、妊婦さんは、妊娠していない時と比べて膀胱炎になりやすい状態にあります。その理由はいくつかあります。まず、妊娠すると、大きくなった子宮がすぐ後ろにある膀胱を圧迫します。これにより、膀胱に溜められる尿の量が減ってトイレが近くなる(頻尿)一方で、完全に尿を出し切れずに膀胱内に尿が残りやすくなります(残尿)。この残った尿が、細菌の温床となってしまうのです。また、妊娠中に分泌が増える黄体ホルモン(プロゲステロン)には、膀胱や尿管の筋肉を緩める作用があり、尿の流れが滞りやすくなることも、細菌が繁殖しやすい環境を作り出します。もし、妊娠中に膀胱炎の症状(排尿時痛、頻尿、残尿感など)に気づいた場合、相談すべき診療科は、迷わず「かかりつけの産婦人科」です。自己判断で様子を見たり、妊娠前に処方された薬を飲んだりすることは絶対にやめてください。産婦人科医は、妊娠中の母体と胎児の状態を最もよく理解している専門家です。妊娠中に膀胱炎を放置することの最大のリスクは、膀胱の細菌が腎臓にまで達して「腎盂腎炎」を引き起こすことです。妊娠中の腎盂腎炎は、高熱や強い腰痛を伴い、重症化すると早産や低出生体重児の原因となる危険性があります。そのため、早期発見・早期治療が何よりも重要になります。産婦人科では、妊婦健診の際に必ず尿検査を行い、尿中の細菌や白血球の有無をチェックしていますが、症状を自覚した場合は、次の健診を待たずに、すぐに連絡して指示を仰ぎましょう。治療には、抗菌薬が用いられますが、産婦人科医は、胎児への影響が少なく、妊娠中でも安全に使用できる薬を慎重に選択して処方してくれます。妊娠というデリケートな時期だからこそ、尿のトラブルは軽視せず、常に母子の健康を見守ってくれている、かかりつけの産婦人科医に相談することが、最も安全で安心な選択なのです。

  • 心臓の悩みを医師に正しく伝えるコツ

    知識

    胸の痛みや動悸、息切れといった心臓に関連する症状で病院を受診する際、自分の状態をいかに的確に、そして漏れなく医師に伝えられるかが、その後のスムーズな診断と治療に大きく影響します。医師は、あなたの言葉を手がかりに、病気の可能性を推測し、必要な検査を組み立てていきます。限られた診察時間の中で、質の高い情報を伝えるために、受診前に少しだけ準備をしておきましょう。まず、最も重要なのが、「症状の具体的な内容」です。単に「胸が痛い」ではなく、どのような痛みなのかを、できるだけ自分の感覚に近い言葉で表現してみてください。「締め付けられるような」「圧迫されるような」「焼けるような」「チクチクする」など、痛みの性質は診断の大きなヒントになります。動悸であれば、「ドキドキと速く打つ」「ドクンと一発強く打つ」「脈が飛ぶ感じ」など、そのリズムや感覚を伝えましょう。次に、「症状がいつ、どこで、どのくらい続くか」という時系列の情報も不可欠です。いつからその症状が始まったのか。痛む場所は胸の中央部か、左側か、あるいは移動するか。痛みや動悸が続く時間は、数秒なのか、数分なのか、あるいは数十分以上なのか。これらの情報は、緊急性の判断にも役立ちます。さらに、「どのような時に症状が起こり、どうすると楽になるか」という状況も伝えましょう。例えば、「階段を上るなど、体を動かした時に起こる」「安静にしていると治まる」「食後に起こる」「特定の姿勢で悪化する」といった情報は、狭心症や他の病気との鑑別において非常に重要です。また、「他にどんな症状があるか」も必ず伝えてください。胸の症状に加えて、冷や汗、吐き気、息切れ、めまい、失神、肩や顎への痛みの広がり(放散痛)、足のむくみなどがないか。これらの随伴症状は、病気の重症度や種類を判断する上で欠かせません。最後に、あなた自身の「リスク因子」についても伝えましょう。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴、家族に心臓病の人がいるか(家族歴)など。これらの情報は、医師が病気の可能性を考える上で、パズルのピースを埋めるように役立ちます。これらの項目を、事前にメモに書き出しておくと、診察時に慌てずに、落ち着いて全ての情報を伝えることができます。あなたの少しの準備が、質の高い医療を引き出すための、最も有効な手段となるのです。

  • ヘルペスかも?私が皮膚科を受診した体験談

    生活

    あれは、大きな仕事のプレゼンを終え、心身ともに疲れ切っていた週末のことでした。ふと、右の唇の端に、ピリピリとしたような、ムズムズするような、何とも言えない違和感を覚えました。最初は乾燥しているだけかと思い、リップクリームを塗っていましたが、翌朝になると、その部分が赤く少し腫れ、小さな水ぶくれが2、3個できていることに気づきました。触るとチクチクと痛みます。「これは、よく聞くヘルペスというやつかもしれない」。そう直感した私は、インターネットで症状を検索しました。出てくる画像は、まさに私の唇の状態そのものでした。サイトには「早く治療を始めないと悪化する」「皮膚科へ」と書かれていました。週明けの月曜日、私は早速、会社の近くにある皮膚科クリニックのドアを叩きました。診察室で医師に唇を見せると、一目見るなり「ああ、典型的な口唇ヘルペスですね。疲れたり、ストレスが溜まったりしませんでしたか?」と尋ねられました。まさに図星でした。医師は、口唇ヘルペスが単純ヘルペスウイルスによって引き起こされること、一度感染すると体内に潜伏し、免疫力が落ちた時に再発することを、模型を使って分かりやすく説明してくれました。そして、「早く来てくれて良かった。薬を使えば、ひどくならずに治せますよ」と言って、抗ウイルス薬の飲み薬と塗り薬を処方してくれました。薬局で薬を受け取り、その日の昼から服用を始めました。すると、驚いたことに、夕方にはあれほど気になっていたピリピリとした痛みが和らぎ、水ぶくれの広がりも止まったように感じました。その後も5日間、指示通りに薬を飲み続けると、水ぶくれはかさぶたになり、1週間後にはほとんど痕も残さずに綺麗に治ってしまいました。もしあの時、自己判断で市販薬で済ませたり、放置したりしていたら、もっと症状がひどくなり、治るまでにも時間がかかっていたかもしれません。症状に気づいてすぐに専門家である皮膚科医に相談したことが、早期回復に繋がったのだと実感しています。体の小さなサインを見逃さず、迅速に行動することの大切さを学んだ経験でした。

  • ある日突然口が開かなくなった私の顎関節症体験

    生活

    私の顎に異変が起きたのは、30代半ば、仕事のストレスがピークに達していた頃でした。最初は、食事の際に時々、右の顎が「カクッ」と鳴る程度の、気にも留めないような些細な症状でした。しかし、数週間が経つうちに、その音は「ゴリッ」という鈍い音に変わり、次第に口を開けること自体に、わずかな痛みと抵抗を感じるようになりました。それでも私は「疲れが溜まっているだけだろう」と高をくくり、だましだまし生活を続けていました。決定的な出来事が起きたのは、ある月曜日の朝です。いつものように朝食のパンにかぶりつこうとした瞬間、顎にロックがかかったように、口が指2本分ほどしか開かなくなったのです。無理に開けようとすると、耳の奥に激痛が走り、冷や汗が出ました。パニックになった私は、まず耳の痛みから「中耳炎かもしれない」と考え、近所の耳鼻咽喉科に駆け込みました。しかし、耳の中を診てもらった結果は「異常なし」。医師からは「顎関節症の可能性が高いから、口腔外科に行ってみては」と勧められました。口腔外科という言葉に馴染みがなかった私は、不安な気持ちで大学病院の口腔外科を予約しました。初診の日、専門医は私の話をじっくりと聞いた後、レントゲン撮影と触診を行いました。そして、顎の動きを慎重に確認しながら、「典型的な顎関節症ですね。ストレスによる夜間の歯ぎしりや食いしばりで、顎の筋肉が異常に緊張し、関節円板というクッションがずれてしまっている状態です」と診断を下しました。治療は、まず夜間に装着するマウスピース(スプリント)の作製から始まりました。そして、顎周りの筋肉をほぐすマッサージや、開口訓練といった理学療法、さらには日常生活での注意点(硬いものを避ける、頬杖をつかないなど)について、丁寧な指導を受けました。治療には数ヶ月を要しましたが、徐々に口は開くようになり、痛みも和らいでいきました。あの時、口が開かなくなった恐怖は忘れられません。そして、顎の痛みを安易に考えず、正しい専門科を受診することの重要性を、身をもって学んだ貴重な経験となりました。

  • これは危険!緊急で受診すべき胸の痛み

    医療

    胸の痛みは、様々な原因で起こりますが、中には一刻を争う、命に関わる危険な病気のサインである場合があります。特に、心臓の病気による痛みは、迅速な対応が生死を分けることも少なくありません。いつもの痛みとは違う、以下のような特徴を持つ胸の痛みが現れた場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。まず、最も危険なのが「急性心筋梗塞」や「不安定狭心症」による痛みです。その特徴は、「突然、胸の中央部あたりが締め付けられる、あるいは圧迫されるような激しい痛み」です。この痛みは、しばしば左肩や腕、顎、背中などに広がること(放散痛)があります。冷や汗や吐き気、呼吸困難を伴うことも多く、安静にしていても痛みが20分以上続く場合は、心筋梗塞の可能性が非常に高いと考えられます。心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が完全に詰まり、心筋が壊死してしまう病気です。一刻も早く詰まった血管を再開通させる治療が必要となります。次に危険なのが、「急性大動脈解離」です。これは、心臓から全身へ血液を送る最も太い血管である大動脈の壁が、突然裂けてしまう病気です。その痛みは、「突然、胸から背中にかけて移動する、引き裂かれるような、これまでに経験したことのないほどの激痛」と表現されます。失神したり、手足の麻痺や腹痛を伴ったりすることもあり、極めて死亡率の高い、緊急手術が必要な状態です。さらに、「肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)」も、見逃してはならない病気です。足の静脈にできた血栓(血の塊)が、血流に乗って肺の動脈に詰まることで発症します。「突然の胸の痛み」と共に、「呼吸困難」や息切れが主な症状です。長時間同じ姿勢でいた後などに起こりやすく、これもまた命に関わる危険な状態です。これらの危険な胸の痛みは、様子を見ている時間はありません。「いつもと違う」「何かおかしい」という直感は、体が発している重大な警告信号です。自己判断で我慢せず、すぐに救急要請を行う勇気が、あなたやあなたの大切な人の命を救うことに繋がります。

  • 口唇ヘルペスと帯状疱疹、皮膚科へ急ごう

    医療

    ピリピリとした違和感の後、唇の周りに小さな水ぶくれができてしまう「口唇ヘルペス」。そして、体の片側に沿って帯状に激しい痛みを伴う発疹が現れる「帯状疱疹」。これらは、どちらもヘルペスウイルス科に属するウイルスが原因で起こる皮膚の病気であり、これらの症状が現れた時にまず向かうべき診療科は「皮膚科」です。口唇ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス1型」が原因で起こります。一度感染すると、このウイルスは顔の神経(三叉神経節)に潜伏し、風邪や疲労、ストレスなどで免疫力が低下した時に再活性化して症状を引き起こします。唇やその周りに、かゆみやチクチクとした痛みを感じた後、小さな水ぶくれがいくつか集まってできるのが特徴です。皮膚科では、この特徴的な見た目から診断を下し、抗ウイルス薬の塗り薬や飲み薬を処方します。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、治癒までの期間を短縮することができます。一方、帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因です。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経節に長年潜伏し、加齢や過労などで免疫力が低下したことをきっかけに再活性化して発症します。体の左右どちらか一方の神経の走行に沿って、帯状に強い痛みを伴う赤い発疹と水ぶくれが現れるのが最大の特徴です。この痛みは非常に強く、「焼けるような」「針で刺されるような」と表現されることもあります。帯状疱疹で最も怖いのは、皮膚症状が治った後も、数ヶ月から数年にわたって頑固な神経痛が残ってしまう「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症です。この後遺症のリスクを減らすためには、発症後できるだけ早く(できれば72時間以内に)抗ウイルス薬の服用を開始し、ウイルスの増殖を強力に抑えることが何よりも重要です。皮膚科では、抗ウイルス薬に加えて、痛みを和らげるための鎮痛薬も処方し、つらい症状をコントロールします。口唇ヘルペスも帯状疱疹も、放置すると症状が悪化したり、痕が残ったり、後遺症に悩まされたりする可能性があります。皮膚に異常を感じたら、自己判断で市販薬を塗ったりせず、皮膚の専門家である皮膚科医に速やかに相談しましょう。

  • 循環器内科と心臓血管外科、その違いとは

    医療

    心臓の病気で病院を探していると、「循環器内科」と「心臓血管外科」という、よく似た名前の診療科を目にすることがあります。どちらも心臓を専門としていることは分かりますが、その役割には明確な違いがあります。この違いを理解しておくことは、自分の症状や状況に応じて、適切な医療を選択する上で非常に重要です。まず、「循環器内科」は、心臓と血管の病気を「内科的」に治療する専門家です。ここでの「内科的治療」とは、主に薬物療法や生活習慣の改善指導、そしてカテーテル治療などを指します。例えば、高血圧や不整脈に対しては、薬を使って血圧や脈拍をコントロールします。狭心症や心筋梗塞に対しては、薬で血栓を予防したり、手首や足の付け根から細い管(カテーテル)を血管に挿入し、狭くなった心臓の血管を風船やステント(金属の網)で広げる「カテーテルインターベンション(PCI)」という治療を行います。つまり、体に大きなメスを入れることなく、内側から病気を治療するのが循環器内科の役割です。一方、「心臓血管外科」は、その名の通り「外科的」なアプローチ、すなわち手術によって心臓や血管の病気を治療する専門家です。薬やカテーテル治療では治すことが困難な、構造的な問題がある場合にその真価を発揮します。例えば、心臓の弁が壊れてしまった心臓弁膜症に対して、人工弁に置き換える「弁置換術」や、自身の弁を修復する「弁形成術」を行います。また、心臓の血管が複数箇所で重度に詰まってしまった冠動脈疾患に対しては、体の他の部分の血管を使って、詰まった部分を迂回する新しい血の通り道を作る「バイパス手術」などを行います。胸を大きく開いて行う、いわゆる「開心術」が、心臓血管外科の代表的な治療法です。診療の流れとしては、まず動悸や胸痛などの症状で「循環器内科」を受診し、そこで心電図や心エコーなどの検査を受けます。そして、その検査の結果、手術が必要と判断された場合に、「心臓血管外科」へと紹介されるのが一般的です。まずは診断と内科的治療の可能性を探るために循環器内科へ、という流れを覚えておくと良いでしょう。

  • なぜ大人のヘルパンギーナは重症化しやすいのか

    医療

    「子どもの夏風邪」と軽んじられがちなヘルパンギーナですが、なぜ大人が感染すると、子どもとは比較にならないほど重く、激烈な症状に見舞われるのでしょうか。その背景には、子どもの頃に様々なウイルスに暴露されてきた経験の有無と、大人ならではの免疫反応の強さが複雑に関係しています。ヘルパンギーナの原因となるのは、主にコクサッキーウイルスA群を代表とするエンテロウイルス属のウイルスです。このエンテロウイルスには非常に多くの血清型(ウイルスのタイプ)が存在します。子どもは、保育園や幼稚園といった集団生活の中で、様々なタイプのエンテロウイルスに次々と感染し、その都度、そのタイプに対する免疫を獲得していきます。そのため、一度ヘルパンギーナにかかっても、次に別のタイプのウイルスに感染した際には、ある程度の交差免疫が働いたり、免疫反応がマイルドになったりして、比較的軽い症状で済むことが多いのです。一方、大人の場合、子どもの頃にヘルパンギーナの原因となる全てのウイルスタイプに感染しているわけではありません。特に、自分が過去に感染したことのないタイプのウイルスに初めて感染した場合、体はそれを完全に未知の侵入者とみなし、全力で排除しようとします。この時、大人の成熟した強力な免疫システムが、サイトカインなどの炎症性物質を過剰に産生し、それが結果として40度近い高熱や、全身の強い炎症反応、そして耐え難いほどの激しい喉の痛みといった、いわゆる「サイトカインストーム」に近い状態を引き起こしてしまうのです。つまり、大人のヘルパンギーナが重症化しやすいのは、免疫力が弱いからではなく、むしろ「強力すぎる免疫反応」が自らの体を攻撃してしまう、という皮肉なメカニズムによるものなのです。また、社会人としてのストレスや疲労、睡眠不足などが免疫バランスを崩し、ウイルスとの戦いをより困難にしている側面も否定できません。子どもの頃に得たはずの免疫も、全てのウイルスタイプを網羅しているわけではないという事実を理解しておく必要があります。