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2025年11月
  • うつ病と間違えやすい病気と診療科

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    気分の落ち込みや倦怠感が続く時、多くの人はうつ病を疑いますが、実は、うつ病と非常によく似た症状を引き起こす、身体的な病気も存在します。これらの病気を見逃さないためにも、心の不調を感じた時に、どのような可能性を考えるべきか、そして、どの診療科が関わってくるのかを知っておくことは非常に重要です。まず、うつ病の症状と間違えられやすい代表的な病気が、「甲状腺機能低下症」です。喉仏の下にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を活発にする役割を担っています。このホルモンの分泌が低下すると、代謝が落ち込み、無気力、倦怠感、集中力の低下、気分の落ち込みといった、うつ病そっくりの精神症状が現れます。同時に、むくみや冷え、体重増加といった身体症状を伴うこともあります。この病気が疑われる場合、専門となるのは「内分泌内科」あるいは「一般内科」です。簡単な血液検査で、甲状腺ホルモンの値を測定すれば診断がつきます。次に、「更年期障害」も、うつ症状と混同されやすい状態です。四十代後半から五十代にかけて、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで、自律神経のバランスが乱れ、イライラや不安感、気分の落ち込み、不眠といった精神症状が、ほてりや発汗といった身体症状とともに現れます。この場合は、「婦人科」が専門となります。また、貧血、特に鉄分が不足する「鉄欠乏性貧血」でも、脳に十分な酸素が供給されなくなるため、だるさや疲れやすさ、集中力の低下、めまいといった症状が起こり、うつ病と間違われることがあります。これは「内科」で血液検査を受ければ分かります。さらに、睡眠時無呼吸症候群や、パーキンソン病などの神経疾患、あるいは一部の薬剤の副作用が、うつ症状の原因となっていることもあります。このように、心の不調の背景には、様々な身体の病気が隠れている可能性があるのです。そのため、精神科や心療内科を受診した際にも、医師はまず、これらの身体疾患の可能性を除外するための問診や、必要に応じて血液検査などを行います。心の不調は、心だけの問題とは限らない。その多角的な視点を持つことが、正しい診断への第一歩となります。

  • 精神科と心療内科の違いと選び方

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    心の不調を感じて病院へ行こうと思った時、多くの人が「精神科」と「心療内科」のどちらを選べば良いのか分からず、立ち止まってしまいます。この二つの診療科は、どちらも心の悩みを扱うという点では共通していますが、その専門領域とアプローチには、明確な違いがあります。その違いを理解することが、あなたに合った適切な医療機関を見つけるための鍵となります。まず、「精神科」が対象とするのは、主に「心そのものの病気」です。その原因は、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなど、脳の機能的な不調にあると考えられています。具体的には、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、パニック障害、強迫性障害、依存症といった、精神疾患全般の診断と治療を専門としています。気分の落ち込み、不安、幻覚、妄想、不眠といった、精神症状が主な悩みの場合は、精神科が最も適した診療科と言えます。治療は、薬物療法(抗うつ薬、抗不安薬など)と、精神療法(カウンセリングなど)を組み合わせて行われることが一般的です。一方、「心療内科」が対象とするのは、主に「心身症」です。心身症とは、精神的なストレスや心理的な要因が、体に影響を及ぼし、身体的な症状として現れる病気のことです。例えば、ストレスが原因で起こる胃潰瘍、過敏性腸症候群、気管支喘息、緊張型頭痛、高血圧、円形脱毛症など、その範囲は多岐にわたります。つまり、症状は「体」に現れているけれど、その根本原因が「心」にある場合に、心と体の両面からアプローチするのが心療内科の役割です。内科の一分野としての側面も持っているため、身体的な検査や治療も行いながら、心理的なケアを進めていきます。では、うつ病の場合はどうでしょうか。うつ病は、精神症状が中心となるため、本来の専門は「精神科」です。しかし、うつ病には、頭痛やめまい、食欲不振といった身体症状も多く伴います。そのため、どちらの科でも相談は可能です。選び方の目安としては、「気分の落ち込みや不安がメインなら精神科」「体の不調がメインで、その背景にストレスがあると感じるなら心療内科」と考えると分かりやすいかもしれません。最近では、両科を標榜するクリニックも多いので、まずは通いやすい場所を探し、電話などで相談してみるのも良いでしょう。

  • 私の胸の赤い点々は肝硬変の始まりでした

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    私が自分の体の異変に最初に気づいたのは、四十五歳の誕生日を迎えた直後のことでした。お風呂上がりに、ふと胸元を見ると、赤いインクを垂らしたような、小さな点が二つ、三つできているのです。痛みもかゆみもなく、最初はあまり気に留めていませんでした。しかし、その赤い点々は、数ヶ月の間に、少しずつ数を増やしていきました。よく見ると、中心から細い血管が伸びていて、まるで小さなクモのようです。インターネットで検索してみると、「クモ状血管腫」という言葉とともに、「肝機能低下」という、不穏なキーワードが目に飛び込んできました。そういえば、最近、体が異常にだるい。長年の付き合いである毎晩の晩酌も、翌朝にひどく残るようになった。思い当たる節は、いくつもありました。会社の健康診断では、ここ数年、ずっと「γ-GTP高値、要経過観察」の判定。それでも、「酒飲みはみんなこんなものだ」と、私は真剣に受け止めていなかったのです。この胸の赤い点々は、私の体が発している、最後の警告かもしれない。そう感じた私は、重い腰を上げ、消化器内科のクリニックを予約しました。診察室で、これまでの経緯と、胸の赤い斑点について話すと、医師は厳しい表情で、腹部のエコー検査と血液検査を指示しました。後日、検査結果を聞きに行った私に告げられた診断は、「アルコール性肝硬変、初期段階」という、あまりにも重いものでした。私の肝臓は、長年のアルコール摂取によって、すでに硬くなり始めていたのです。胸の赤い点々(クモ状血管腫)も、手のひらの赤み(手掌紅斑)も、すべては肝臓が悲鳴を上げていたサインでした。その日から、私の生活は一変しました。医師から、絶対的な「禁酒」を言い渡され、塩分を控えたバランスの良い食事を指導されました。幸い、初期段階での発見だったため、適切な治療と生活改善によって、病気の進行を食い止めることができています。今でも、時々、胸の赤い点々を見つめます。これは、私があの時、人生の軌道修正をするきっかけをくれた、大切な「お守り」のようなものなのです。

  • 手のひらが赤いのは肝臓の危険信号

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    普段、あまり意識して見ることのない自分の手のひら。ふと見てみると、なんだか全体的に赤い、特に親指の付け根のふくらみ(母指球)と、小指の付け根のふくらみ(小指球)が、まだらに赤くなっている。そんな症状に気づいたら、それは「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」と呼ばれる、肝臓からの危険信号かもしれません。手掌紅斑は、その名の通り、手のひら(手掌)が赤くなる(紅斑)症状で、肝機能が低下している際に見られる特徴的な皮膚所見の一つです。ただ手が赤いだけでなく、指で圧迫すると一時的に色が白くなり、離すとまた赤く戻るのが特徴です。通常、かゆみや痛みといった自覚症状はありません。この症状が現れるメカニズムは、胸や首にできるクモ状血管腫と同じです。肝臓の機能が、慢性肝炎や肝硬変、あるいはアルコールの過剰摂取などによって低下すると、体内で作られる女性ホルモン「エストロゲン」を十分に分解・処理することができなくなります。その結果、血液中のエストロゲン濃度が上昇し、その血管拡張作用によって、手のひらの末梢血管が拡張してしまうのです。特に、毛細血管が密集している母指球と小指球に、その影響が顕著に現れ、まだら状の赤みとして認識されるようになります。手のひらの中心部が、比較的白っぽく見えるのも特徴の一つです。もちろん、手のひらや指が赤くなる原因は、肝臓の病気だけではありません。運動後や入浴後など、一時的に血行が良くなって赤くなることもありますし、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や、妊娠、甲状腺機能亢進症などでも、似たような症状が見られることがあります。しかし、他に思い当たる原因がなく、持続的に手のひらが赤い状態が続き、さらには、体がだるい、食欲がない、お酒をよく飲むといった自覚がある場合は、肝機能の低下を疑うべきサインと言えます。手掌紅斑は、それ自体が体に害を及ぼすものではありません。しかし、その背後で、肝臓の病気が静かに進行している可能性を示唆しています。この小さなサインに気づいたら、一度、消化器内科などを受診し、肝臓の状態をチェックしてもらうことをお勧めします。