姿も見ていないし、物音も聞いていない。フンなどの明確な証拠もない。それなのに、なぜか「この部屋にゴキブリがいる気がする」という、漠然とした、しかし妙に確信めいた感覚に襲われることはないでしょうか。科学的な根拠はないものの、この種の「第六感」や「直感」は、あながち間違いではないかもしれません。その感覚の正体は、私たちが無意識のうちに捉えている、ごくわずかな環境の変化である可能性があります。例えば、ゴキブリが発する集合フェロモンによる「独特の臭い」です。この臭いは非常に微量で、多くの人は意識的に嗅ぎ分けることはできません。しかし、嗅覚が鋭い人や、その空間の普段の匂いをよく知っている人は、無意識レベルでそのわずかな違和感を「何かおかしい」「気配がする」という感覚として捉えているのかもしれません。また、私たちは、自分たちのテリトリーである家の中の物の配置や状態を、無意識のうちに記憶しています。もし、ゴキブリが夜間に活動し、ごくわずかに物を動かしたり、小さなゴミを落としたりした場合、その些細な変化を「部屋の空気が違う」「何かがいる感じがする」という直感として感じ取っている可能性も考えられます。これは、原始時代に外敵の気配を察知して生き延びてきた、人間の本能的な危機察知能力の名残とも言えるかもしれません。もちろん、単なる思い込みや気のせいであることも多いでしょう。しかし、もしあなたが自分の部屋で強いゴキブリの気配を感じるのであれば、その直感を無視すべきではありません。それは、あなたの脳が、言葉にならないレベルで何らかの異常を警告しているサインなのです。その感覚を信じて、一度、部屋の隅々を徹底的にチェックしてみることをお勧めします。家具の裏やシンクの下など、普段見ない場所を調べてみることで、あなたの直感が正しかったことを証明する、何らかの痕跡が見つかるかもしれません。