私は自分の健康には絶対的な自信を持っていましたが、二十代後半の夏、人生で最も過酷な一週間を経験しました。始まりは、仕事中に感じた耳の下のわずかな違和感でした。最初は「リンパが腫れているのかな」程度にしか思っていませんでしたが、その日の夜から熱が急上昇し、翌朝には鏡を見るのが怖くなるほど右側の顔がパンパンに膨れ上がっていました。口を少し開けるだけで顎の関節に激痛が走り、唾液を飲み込むことさえ苦痛でした。近所の内科を受診したところ、すぐに耳鼻咽喉科への転院を促され、下された診断は流行性耳下腺炎でした。子供の頃におたふくかぜを経験した記憶がなかったことが、今になって裏目に出たのです。医師からは「大人がかかると本当にきついですよ」と言われましたが、その言葉は数時間後に現実となりました。熱は四十度近くまで上がり、意識が朦朧とする中で、今度は左側の耳下腺までもが腫れ始めました。両頬が膨らみ、首との境界線がなくなるほどの腫れに、自分の顔が別人のように見えて涙が出ました。最も辛かったのは食事です。空腹を感じても、食べ物を噛む振動がダイレクトに患部に響き、さらに唾液が分泌される瞬間に走るキューッという絞られるような痛みは、文字通り悶絶するほどでした。数日間はゼリー飲料をストローで少しずつ飲むのが精一杯で、体重も一気に落ちました。さらに、ネットで調べた「大人の合併症」という情報が私を追い詰めました。精巣炎や髄膜炎、難聴のリスクに怯え、少しでも頭痛がしたり、別の場所が痛んだりするたびに生きた心地がしませんでした。幸い、私は重篤な合併症には至りませんでしたが、腫れが完全に引き、体力が戻るまでには二週間近い時間を要しました。仕事にも大きな穴を開け、職場復帰した際も周囲への申し訳なさでいっぱいでした。この経験から学んだのは、予防接種の重要性です。もし私が事前に抗体検査を受け、ワクチンを打っていれば、これほどの苦しみを味わうことはなかったでしょう。大人の耳下腺炎は、単なる風邪の延長ではありません。全身を破壊するようなパワーを持ったウイルスとの戦いです。今、もしおたふくかぜの免疫があるか不安な方がいたら、迷わず検査を受けてほしいと思います。あの激痛と不安を、他の誰にも経験してほしくないからです。