多くの人が経験する、ふくらはぎの不快な症状。夜中に突然襲ってくる「こむら返り」の激痛や、夕方になるとパンパンになる「むくみ」。これらの症状は、単なる筋肉疲労や加齢のせいだと片付けられがちですが、実はその背景には、特定の「栄養素」の不足が深く関わっていることが少なくありません。いわゆる「新型栄養失調」が、足元から悲鳴を上げさせているのかもしれません。まず、寝ている時や運動中に突然ふくらはぎがつる「こむら返り」は、筋肉の異常な収縮によって起こります。この筋肉の収縮と弛緩をスムーズにコントロールしているのが、カルシウム、マグネシウム、カリウムといったミネラルです。特に「マグネシウム」は、筋肉の過剰な興奮を鎮める重要な役割を担っており、不足すると、わずかな刺激でも筋肉が痙攣しやすくなります。マグネシウムは、加工食品の摂取が多い現代人にとって、最も不足しやすいミネラルの一つと言われています。次に、夕方になると足が重くだるくなる「むくみ」です。むくみの原因は様々ですが、栄養面で考えられる大きな要因が、「タンパク質」、特に血液中に存在する「アルブミン」の不足です。アルブミンは、血管内に水分を保持する役割(膠質浸透圧)を担っています。しかし、食事からのタンパク質摂取が不足し、血中のアルブミン濃度が低下すると、血管内の水分が外に漏れ出しやすくなり、むくみとなって現れるのです。また、ふくらはぎの筋肉量が少ないと、血液を心臓に送り返す「筋ポンプ作用」が弱まるため、重力によって水分が下半身に溜まりやすくなります。筋肉の材料であるタンパク質が不足すれば、当然、筋肉量は減少し、むくみに繋がります。さらに、塩分の摂りすぎも、体内に水分を溜め込む原因となりますが、それを排出する働きを持つのが「カリウム」です。カリウムが不足すると、体内のナトリウムとのバランスが崩れ、むくみやすくなります。このように、ふくらはぎの「つり」と「むくみ」は、それぞれミネラル不足とタンパク質不足という、異なる栄養課題を反映している可能性があります。ふくらはぎの症状は、あなたの食生活を見直すための、体からの大切なメッセージなのです。