目尻に現れる「ものもらい」のような症状には、実は二つの全く異なる病態が隠れています。これらを正しく見分けることは、自分で行うべきケアの方向性を決めるだけでなく、受診の緊急性を判断する上で非常に重要です。その二つとは、急性の細菌感染である麦粒腫と、慢性の分泌物停滞である霰粒腫です。まず、麦粒腫の見分け方のポイントは「痛み」と「スピード」です。ある日突然、あるいは一晩のうちに目尻が赤く腫れ、触れると「痛っ」と感じるような鋭い痛みがある場合、それはほぼ間違いなく麦粒腫です。これはまぶたの脂腺にバイ菌が入った、いわば「まぶたのニキビ」のような状態です。赤みが強く、瞬きをするだけで不快感があるのが特徴で、数日経つと目尻の腫れの中心に黄色い膿が見えてくることもあります。これに対し、霰粒腫の見分け方は「しこり」と「無痛性」にあります。目尻に何か小さな粒のようなものが入っている感覚はあるけれど、触ってもそれほど痛くない、赤みもさほど強くないという場合は霰粒腫の可能性が高くなります。これは脂の出口が詰まり、内容物が硬く固まってしまった状態です。麦粒腫が数日で劇的に変化するのに対し、霰粒腫は数週間から数ヶ月かけてゆっくりと大きくなったり、そのまま停滞したりします。特に目尻側にできる霰粒腫は、目尻の皮膚が引っ張られることで、瞬きのたびに眼球に違和感を与え、「ゴロゴロする」という訴えに繋がることが多いです。もう一つ、重要なチェックポイントは「まぶたの裏側」です。まぶたを少しめくってみて、裏側の粘膜が真っ赤に充血していれば麦粒腫、裏側に白っぽく盛り上がったしこりが見えれば霰粒腫という目安になります。対処法として、麦粒腫は細菌を叩く必要があるため抗菌剤の点眼が必須ですが、霰粒腫の場合は炎症が落ち着いていれば「温めること」が主なケアになります。ただし、厄介なのは、霰粒腫に細菌感染が合併して急激に痛み出す「化膿性霰粒腫」というケースです。この場合、見た目は麦粒腫と区別がつきませんが、治療にはより強力な処置が必要になることがあります。もし目尻の違和感が、痒みから痛みに変わった、あるいはしこりが急に大きくなったと感じるなら、それは見分けの限界を超えたサインです。目尻という繊細なコーナーで起きている出来事を、主観的な痛みだけで判断せず、鏡を使って客観的に観察する習慣を持ちましょう。自分の目が発しているサインを正しく読み解くことは、不必要な不安を取り除き、最短で健やかな視界を取り戻すための第一歩となるのです。
目尻の違和感を見逃さない麦粒腫と霰粒腫の見分け方