私はかつて、夏が大好きで、太陽の光を浴びることが元気の源だと思っていました。しかし、ある年の夏、その自信は粉々に砕け散りました。仕事の外回りで灼熱のアスファルトの上を歩き回り、汗だくになってオフィスに戻る。キンキンに冷えた室内で急速に体が冷やされ、一息つく間もなくまた炎天下へ。そんな生活を二週間ほど続けた頃、私の体に異変が起きました。最初は朝、目が覚めた瞬間の異常な体の重さでした。まるで鉛の服を着せられているような感覚で、起き上がろうとしても力が入らないのです。会社へ行けば、冷房の風が当たった瞬間に奥歯がガタガタ震えるほどの寒気を感じる一方で、顔だけはのぼせたように熱く、思考が霧に包まれたように停止してしまいました。内科を受診しても「特に異常なし、夏バテでしょう」と言われるだけでしたが、症状は悪化する一方。夜は足先が氷のように冷たいのに、胸元は汗ばんで眠れず、ついには食事の匂いを嗅ぐだけで吐き気がするようになりました。インターネットで自分の症状を必死に検索し、ようやく辿り着いたのが「自律神経失調症」という言葉でした。私が経験していたのは、まさに温度差という暴力によって破壊された自律神経の断末魔だったのです。回復への道のりは、まず自分の生活環境を徹底的に「自律神経に優しいもの」に変えることから始まりました。冷房は二十七度以上に設定し、自宅では必ずレッグウォーマーを着用して足首を冷やさないようにしました。食事も、どんなに暑くても温かい味噌汁や白湯を摂るように変えました。最も効果があったのは、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴習慣です。夏場はシャワーだけで済ませがちですが、湯船に浸かることで副交感神経を優位にし、張り詰めた神経をリセットすることができたのです。三ヶ月の時間をかけて、私の体はようやく正常なリズムを取り戻しました。あの時、もし私が「ただの夏バテだ」と自分を騙し続けていたら、今頃はどうなっていたか分かりません。自律神経の乱れは、本人の努力や根性でどうにかなるものではありません。それは物理的な環境の不一致が引き起こすシステムエラーなのです。今、夏が辛いと感じている皆さんに伝えたいのは、自分の体が出している「もう無理だ」というサインを絶対に無視しないでほしいということです。無理をして活動を続けることよりも、一度立ち止まって自分の体を温め、休ませることの方が、遥かに勇気のいる、そして正しい決断なのだと私は確信しています。