これから妊娠を希望している女性やそのパートナーにとって、自分たちが子供の頃に水疱瘡にかかったかどうかを明確にすることは、単なる過去の確認以上の重い意味を持ちます。妊娠中に初めて水疱瘡に罹患することは、母体だけでなくお腹の赤ちゃんにとっても、深刻な事態を招くリスクがあるからです。まず、母体側のリスクとして、妊娠中は免疫機能が変化するため、通常の大人の感染よりもさらに水痘肺炎などの合併症が起こりやすく、重症化する傾向があります。さらに衝撃的なのは、赤ちゃんへの影響です。妊娠初期から中期にかけてお母さんが水疱瘡にかかると、数パーセントの確率で「先天性水痘症候群」と呼ばれる疾患が赤ちゃんに現れることがあります。これには、低出生体重、皮膚の瘢痕(傷跡)、四肢の形成不全、脳の萎縮や眼の異常などが含まれ、一生に関わる重い障害となる可能性があります。また、出産間際にお母さんが発症した場合は、赤ちゃんが生まれてすぐに重症の水疱瘡を発症する「新生児水痘」のリスクがあり、これは赤ちゃんの命を脅かす緊急事態となります。こうした悲劇を防ぐために、妊活中の女性が真っ先に行うべきは、自分の水疱瘡の免疫状態を抗体検査で確認することです。もし、かかったかわからない、あるいは検査で抗体が不足していることが判明した場合は、妊娠前にワクチンを接種することで、これらすべてのリスクをほぼゼロに抑えることができます。ここで重要な注意点は、水痘ワクチンは「生ワクチン」であるため、接種後二ヶ月間は避妊が必要であるという点です。つまり、妊娠してからではワクチンを打つことはできません。もし妊娠中に水疱瘡の流行に遭遇し、自分が無防備であることに気づいても、成す術が限られてしまいます。だからこそ、妊活のスタートラインにおいて「免疫の棚卸し」を行うことが不可欠なのです。また、同居するパートナーがウイルスを持ち込まないよう、パートナーも同時に検査を受け、必要であればワクチンを接種することが「家族の安全を守る」ためのスタンダードな考え方となりつつあります。自分は大丈夫だろうという根拠のない自信は、守るべき小さな命を危険に晒すことになりかねません。科学的な検査に基づいた確かな安心を手に入れてから、新しい命を迎える準備を始めること。それが、親となる人間がまず子供に贈るべき、最初の愛情の形ではないでしょうか。
妊活前に知っておきたい水疱瘡の免疫有無と影響